オンボード光モジュール LIGHTPASS®-EOB 100G vol. 2
I-PEXはオンボード光モジュールLIGHTPASS®-EOB 100Gを開発。本記事にて光モジュールの詳細内容をご紹介します。
ここまでの流れの振り返りはvol.1をご参照ください。
2:世界最小クラスの超小型光トランシーバチップ
IOCore®は、アイオーコア株式会社が開発したシリコン基板上に光素⼦を形成する「シリコンフォトニクス技術」を⽤いて作製した5mm⾓サイズの光トランシーバチップで、1chあたり25Gbps の伝送速度を持ち、送受4chで合計100Gbpsの伝送速度による双⽅向通信が可能です。
1) 特長
- 超小型・高密度パッケージ(全ての送受信機能を5mm のシリコンチップに集積)
- 全温度動作(100℃超動作可能な量子ドットレーザを採用し、-40~85℃全温度動作を実現)⇒ 105℃まで拡張予定
- 高い信頼性(高効率・高信頼の量子ドットレーザを採用)
- 容易なファイバ結合技術(十分なトレランスを有する光ピン構造により、パッシブ光結合が可能)
- 低コスト(製造全行程を自動化し、高い生産性と低コスト化を実現)
2) IOCore®の構成
5mm角のシリコンチップの中に、フォトダイオード(PD)、トランスインピーダンスアンプ(TIA)等を設けた受信側、レーザーダイオード(L D)、変調器、グレーティングカプラ等を設けた送信側をそれぞれ内蔵しております。
受信側では上部の光ファイバからの光信号を光ピンへ通して、シリコン基板上に実装されたPDで受け、TIAを通じて、チップ端に設けた電極を通して電気信号をモジュール基板に伝送します。
送信側では、逆に、チップ端の電極から引き込んだ電気信号をもとに、LD の光を変調し、光信号に変換し。光導波路を通してグレーティングカプラによって、光ピンに信号を跳ね上げ、上部に備えた光ファイバに引き込みます。
3) 量子ドットレーザ(QD-LD)
光源には高温動作でも高出力を維持可能な量子ドットレーザ(QD-LD)を適用。QD-LDは反射耐性が高く、RIN(相対雑音強度)特性が良く通信システムのノイズや信号品質に関連する問題を最小限に抑えることが出来る。また、従来のLD に比べ温度による性能のばらつきが少なく安定している。
従来のLD(Quantum Well)
電子を1次元的に閉じ込めた従来のLD の活性層。
温度の変化により電子の動きが増すため高温で特性が劣化するという問題がある。
QD-LD(Quantum Dot)
活性層に量子ドットを用いたレーザ。
量子ドットに閉じ込められた電子のエネルギーは限定的になり、温度が上昇しても電子の状態変化が少なく温度特性が飛躍的に改善される。
※量子ドットとは、10nm 程度の電子の波長サイズの半導体の微小な粒
4) Optical IOCore® 送信について(電気→光)
変調器は温度感度の低いマッハツェンダ(MZ)変調器を使用。MZ変調器は、変調効率の式はC×V で与えられます(C = 静電容量、V = 供給電圧)。 Cは温度に依存せず、変調電圧は一定であるため、周波数帯域は広い温度範囲で安定。したがって、広い温度範囲でジッターの少ない非常に安定した光出力波形を得ることができます。
5) 光結合構造
光トランシーバチップのシリコン基板上に実装された光素子と光ファイバ間の結合部には光ピンを使用しております。光ファイバのコア部と同様に、光ピンの境界面では光は反射し、外に漏れない構造となっているため、受光側では光ファイバからの光信号をフォトディテクタに繋ぐためのじょうごのような役割を果たしており、送信側ではグレーティングカプラから跳ね上げた光信号を光ファイバに伝える役割を果たしており、受光側、送信側それぞれ±1 0μm 以上の結合トレランスを確保しております。
6) 光結合の温度依存性
送信側の光結合部、すなわち光ピンからの光出射部は、温度依存性を持っています。
これはLDの波長が温度特性を持っていることによるもので、温度変化によってLDの波長は1℃あたり0.6nmシフトします。
さらにグレーティングカプラからの光の出射角は波長依存性を持っており、波長1nm変化毎に0.083°シフトします。
このことから、グレーティングカプラからの出射角度は1℃ごとに0.05°変化するものとなり、-40℃から105℃の環境温度変化においては、±3.6°角度が変化することとなります。
その変化量に対し光ピンの開口数0.4以上であり、 最大入射角度23.6°となっており、十分な入射角度を確保しているため、光ピンに入った光は、温度変化によって角度が変わっても、外部に漏れることなく上部のファイバに光信号を伝えることができる構造となっております。
QD-LD :波長シフト0.6nm/℃
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出射角変化: 0.05degree/°C |
-40~105℃の範囲で
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7) 光結合の光軸解析
光軸解析の結果、グレーティングカプラからの出射光変化に対して光ピンから漏れることなく上部のファイバへの伝送を確認。
以下より他の章もご参照ください:
1:超薄型光モジュール
2:世界最小クラスの超小型光トランシーバエンジン
3:高速、低背の電気コネクタ
4:超低背ファイバアレイ
5:高放熱モジュール構造
6:超薄型光トランシーバモジュール評価結果
まとめ