PAMx(x=2,3,4...)シグナルテクノロジーとは?

1.    はじめに

近年、PAMシグナル伝送テクノロジーは、エンタープライズ市場を中心に広く普及していますが、民生用のアプリケーションや車載用のアプリケーションへも普及しつつあります。今回、PAMの採用が増加しているその背景や定義について紹介します。また、PAMとNRZ方式との関係性やメリット、デメリットについても記述します。

 

2.    NRZ/PAM2とPAM4 (Pulse-Amplitude Modulation 4-levels)の違い

NRZ(Non-Return-to-Zero) は、Fig.1-1 に示すように、1 ビット:"0" , "1" を2段階の電圧で表現する一般的なシグナルテクノロジーです。 尚、NRZは、信号方式としてはPAM2(Pulse-Amplitude Modulation 2-levels)と同意語です。 従って本文書中では、NRZをNRZ/PAM2と表記します。それに対しPAM4は、Fig.1-2 のように4段階の電圧レベル(2ビット:"00", "01", "10", "11")を1クロック周期間隔 UI(Unit Interval)で符号化し3階層のアイ・パターンを生成するシグナルテクノロジーです。

 

Fig1-1_1-2
Fig.1-1, Fig.1-2

 

Fig.1-3
Fig.1-3

 

3.    PAM4のメリット

PAM4は、Fig.1-1 に示すようにNRZ/PAM2信号と同じ電気的特性(UI、ナイキスト周波数、シンボルレート)を維持しながらデータレートが2倍になる優位性を実現出来ます。例えば、NRZ/PAM2の信号方式でデータレートを2倍にした場合,Fig.1-3 および Table 1 に示すように主要な電気特性(UI,ナイキスト周波数,シンボルレート)は元の信号よりも不利となります。

Table 1 は、①NRZ/PAM2 のデータレートを2倍にした場合の②PAM4と③NRZ/PAM2の比較でメリット、デメリットを表します。

Table1
Table 1

4.    PAM4のデメリット

参考例として、最大電圧レベル400mVppを維持したまま、NRZ/PAM2からPAM4へ信号を切り替えると、PAM4信号の4つの電圧レベルは、計算上400mV、266mV、133mV、0mVにて示されます。したがって、Fig.1-2 に示すように、各3階層のアイ・パターンは、NRZ/PAM2信号と比較して1/3 EH (Eye Height) となり、NRZよりPAM4はノイズの影響を受けやすいと言えます。

 

5.    PAMx(2、3、4、6、8、16)の比較に関して

PAM(Pulse-Amplitude Modulation)には、様々な数値名称でのバリエーションが存在します。Table 2 は,代表的な数値名称であるPAMx(2, 3, 4, 6, 8, 16)の主要項目を比較したものです。主要項目の計算式は、以下の通りです。

 Symbol Rate (Gsym/s)    = 1 / UI
 Data Rate (Gbps)    = Symbol Rate x Bits per Symbol (注1参照)
 Nyquist Frequency (GHz)    = Symbol Rate / 2
 Note 1 : Bits per Symbolは、Table 2 に示すようにPAMの数値名称に依存します

Table2
Table 2

 

6. 何故、PAMxの採用事例が増えているのでしょうか?

NRZ/PAM2のデータレートの上限は、Fig. 2 に示すように100Gbps程度と推察されています。仮に100Gbpsを超えるデータレートでNRZ/PAM2を使用すると、採算性の確保が難しくなると考えられます。また、一般的な伝送媒体(AOC、ACC、DACなど)(Note.2)には、いずれも同様の限界があります。その結果、PAMxは50Gsym/s/laneを超えるデータレートを実現するための1つの効果的解決手段です。

Note 2 : AOC (Active Optical Cable), ACC (Active Copper Cable), DAC (Direct Attach Cable)

Fig. 2 は、代表的なシグナルテクノロジーのロードマップです。斜めの細い矢印はそれぞれ異なるPAMxを示しその関連規格は、個別のマーカーで示しています。①Technology Limitと記載された大きな赤矢印は、NRZ/PAM2データレートの限界を表しています。また② Technology Trendと記載された大きな青矢印は、PAMxのバリエーションまたはその他の信号変調技術を示しその新しいシグナルテクノロジーの方向性を示しています。

image4
Fig.2

 

7. まとめ

1) NRZ/PAM2のシグナルテクノロジーの限界は、1レーンあたり100Gbps(100Gsym/s)程度までと推察される
2) PAMx (3, 4, 8, 16) は採算性を確保するためのNRZ/PAM2の代替シグナルテクノロジーである
3) 1レーンあたり200Gbpsを超えるデータレートの場合、PAMxの新しいバリエーションや他の変調技術を使用する必要がある

 

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