ウエハー製品 (KRYSTAL® Wafer)

KRYSTAL Wafer

お客様の成膜装置で単結晶成膜をご希望の場合、ZrO2バッファーや下部電極KRYSTAL® Waferを使用した単結晶成膜に関するアドバイスなども行っております。

 

KRYSTAL® Waferとは


優れた単結晶圧電薄膜の成膜技術により開発したZrO2 Buffer(下地層)を使用することで、上に成膜する様々な圧電材料を単結晶化し、高性能化することができる優れた圧電MEMS用ウエハー。

KRYSTAL® Wafer は極めて高いPlatform性をもち、PZTの単結晶化だけでなく非鉛系を含む多種多様な圧電材料の単結晶化に成功しています。
また、顧客成膜装置での単結晶化の再現も実証実績があります。

Mechanism of KRYSTAL wafer

 

 

KRYSTAL® Wafer の製品タイプ


  • ZrO2 バッファー基板(ZrO2

KRYSTAL Wafer金属であるジルコニウム(Zr)の酸化物である二酸化ジルコニウムはジルコニアとも呼ばれ、高い融点をもつ物質として知られていますが、結晶構造としては、空間群P4₂/nmcに分類されるDitetragonal dipyramidal構造をとります。このピラミッド構造は上層の材料の格子定数に合わせるように変形し、上層材料の単結晶化に寄与しています。これがKRYSTAL® Waferの単結晶技術のキーテクノロジーとなっています。

 

  • 下部電極Pt基板(Pt/ZrO2

KRYSTAL Wafer抵抗が低く、薄膜化が容易なため、圧電素子の成膜時に電極としてよく使用されています。お客様からのご指定により、ZrO₂上にPt膜を成膜したものを提供いたします。

 

  • 下部電極SRO/Pt基板(SRO/Pt/ZrO2

KRYSTAL Waferルテニウム酸ストロンチウムSRO(SrRuO₃)は強磁性体金属酸化物の一種でRuddlesden-popper型化合物です。結晶構造はペロブスカイト型構造をとり、Pt膜上に成膜することによって、膜安定性を向上させます。KRYSTAL® Waferの標準仕様の下地電極膜に使用されています。

 

  • 単結晶PZT基板

KRYSTAL Waferアクチュエータ用途: 逆圧電効果利用向けの設計。高いd定数と耐電圧性を持ちながら、低い誘電率を実現した、バランスを取った仕様のPZTです。

センサ用途: 圧電効果利用向けの設計。高いc軸配向性を持ち、比誘電率を140以下まで下げることで、歪みによって発生する電荷量の向上を狙った仕様になっています。

 

  • 上部電極付単結晶PZT基板

KRYSTAL Wafer単結晶PZT膜の上に上部電極としてSRO+Pt膜を成膜して納品いたします。
*KRYSTAL® Waferの単結晶PZT薄膜に上部電極を成膜する場合、Pt(白金)/SRO(ルテニウム酸ストロンチウム)の膜構成を標準的に提案しています。

 

 

  • 非鉛系(鉛フリー)圧電薄膜基板


PZT膜は優れた特性を示し、様々な用途に利用されていますが、その一方で材料に微量の鉛成分が含まれているため、近年の環境や健康への影響の観点から使用が制限される場合があります。PZT膜と同等以上の特性を実現する非鉛系圧電素材の単結晶化にも取り組んでおります。例えば、BTO、ALN、LaNbO₃、LaTiO₃、KNNといった圧電膜の単結晶化にも既に成功しています。

 

  • 対応基板材質: Si基板、SOI基板

 

  • 標準対応基板サイズ: 6インチ、8インチ

 

 

 

電極材料の単結晶化によるPt電極の低抵抗化(導電率向上)について


デバイスにおける電極の低抵抗は重要なパラメーターです。デバイスの発熱対策や低消費電力化、S/N比の向上に効果があることが分かっています。弊社では、独自技術により電極材料を単結晶化した結果、抵抗率が低減(導電率が向上)されていることを確認しました。

(試験方法)
■ 測定器:Surface Resistivity Meter Model SRM-232(NPS製)
■ 測定方法:4端子を電極基板に接触させ、シート抵抗を測定
※複数測定の平均値を使用

バルク(文献値)と比較して同等以下の抵抗率となっていることが確認できました。特に、Pt(111)配向では、バルクの1/3以下の抵抗率となっており、異方性も確認できたと考えています。これらの結果は電極での損失を低減する効果が期待され、お客様のデバイス性能向上に貢献できるものと考えています。Pt以外の材料についても単結晶化の実績がございます。詳細はお問い合わせください。

Pt Resistance value

 

 

TEOS成膜によるPZT薄膜の劣化挙動について


PE-CVDによるTEOS成膜によるPZTの変化を評価しました。TEOSによる熱やプラズマによるPZT劣化を見るために、P-Eヒステリシスの変化で検証しました。

(条件)
■ 試験サンプル: Pt(100nm)/PZT(2000nm)/SRO(40nm)/Pt(150nm)/ZrO2(60nm)/Si基板
■ PE-CVD条件: 500nm-300℃
■ 測定機: 強誘電体評価装置(東陽テクニカ製)
■ 波形: 三角波、100Hz、±100V、1Pass(+ループ)

TEOS成膜前後での比較で、P-Eヒステリシスにほぼ変化がないことが確認されました。
これはTEOS成膜によるPZTの劣化が発生していないことを意味し、弊社のPZTがプラズマダメージに耐性があることを確認。

P-E